『だけど私が小学校に入学したくらいから、私のうちは壊れ始めた。最初はね、沢山怒鳴っているだけだったんだ。でも…エスカレートしていくうちにお父さんはお母さんに。───────────暴力をふるうようになった』
あたしが想像もしていなかった、あまりにも残酷な日常だった─────────
『毎日ね。どれだけ部屋に閉じこもっても、お母さんの''痛い''、''やめて''って叫び声と大きな物音がするの。何でこんな事になったんだろう。家から逃げ出したい、帰りたくないって毎日そう思ってた』
杏結莉の話はどんどんエスカレートしていく。
『だけどその頃はまだ、お母さん相手だけで。怖かったけど私が何かをされることはなかった。小1の私に出来る事なんてなくて…毎日痣が増えるお母さんにただただ寄り添うことしかできなかった』
だけどね、そういって杏結莉は話を続ける。
『小2も終わりそうな寒い冬の日。私はその日初めてお父さんに叩かれた』
杏結莉の話はまだ小5だったあたしにとっては刺激が強すぎて、理解するには時間が必要だった。
『その日を境にお父さんは私にも暴力をふるうようになった。きっと…もうお母さんだけじゃ物足りなかったんだ。痣や傷が出来ても私には学校に行かなきゃならない義務があるから。お母さんの化粧道具を借りたり、絆創膏を使ったりしてごまかしてた。けど…奏穂にはバレちゃってたよね』
『当たり前だよ。あたしたち、親友だよ?…気づかないはず、ないっ……』
『…うん。ありがとう』
杏結莉は涙1つ流していなかった。
いやきっと…涙の流し方を忘れてしまっていたのかもしれない。
『私がね、学校を楽しいと思えるようになったのは。───────────奏穂のおかげなんだよ』
『…え?』



