【奏穂side】
できたばかりなのか、人気のない高層マンションに入っていく。
目的は屋上。
何でかなんて分からない。
ただ無意識に、そこに向かってる。
杏結莉と出会ったのは小3のクラス替え。
席が隣になったことがきっかけだった。
出会った当初は人見知りが激しくて、仲良くなるには一苦労。
それでも仲良くなりたかったあたしは、声をかけ続けた。
そんな努力が実を結んだのか、気づけば杏結莉の方から話をかけてくれるようになった。
一緒にご飯を食べたり、お話したり、遊んだり。
そこから''親友''と呼べるほどの仲になるまでは、そう時間はかからなかった。
そして、仲良くなるにつれてあたしには気になることができ始めた。
それは、
──────────杏結莉のケガがあまりにも多かったこと。
別にケガをすること自体は不思議でも何でもない。
ただ杏結莉の場合、その頻度が多すぎた。
だけど杏結莉の顔を見るとその事には触れられなくて。
気づけば2年の月日が流れてた。
─────────────────────……
────────小5の秋。
少し肌寒くなってきた、そんな日の朝。
登校してきた杏結莉を見て、あたしは目を疑った。
『杏結莉…どうしたの……?』
『うん…ちょっとね』
そういう杏結莉の目には眼帯。
首から吊られた痛々しい左手。
痣だらけの足。
『ちょっと、じゃないよね?』
『…うん。奏穂にはもう隠せないや。今日、奏穂んち行っていいかな?全部話したい』
その日の授業は全く身が入らなかった。
杏結莉の話が軽いものじゃないことくらい、一緒に過ごしてれば容易に想像出来た。
何か大変な事に触れてしまった気がして、気が気じゃなかった。



