【奏穂side】
「ちょっとお手洗い行ってくる」
楽しいBBQも終盤。
あたしはキリのいいところで席を立った。
「気を付けて行ってこいよ」
「うん、大丈夫だよ」
心配性の海叶の見送りの言葉を受け、あたしは少し先のお手洗いに向かって歩く。
てっきり''ついていく''とか言うかと思ったけど…
さすがにここまではこないか。
早く済ませて戻ろう。
そんな気持ちだった。
トイレに近づくとはっきりしてくる街の景色。
見慣れたその光景の中に1つ、
──────────大きなマンションが見えた。
「…あ、はっ………」
荒れる鼓動と激しい動機。
あたしはそれらを無視してトイレに駆け込んだ。
「ごめん…ごめんね……」
お手洗いを済ませると自然に足が向くのは高層マンション。
「…行かなくちゃ、杏結莉…────────」
忘れてないよ、杏結莉。
ごめんね…。
黒木 杏結莉(クロキ アユリ)。
あたしの小学校の頃の親友で、大好きだった友達。
なんでも言い合って、相談しあって、時には喧嘩もした。
ずっとずっと一緒だって思ってた。
でも、杏結莉はもういない。
あたしのせいで──────────────
──────────あたしが杏結莉を、殺したんだ。



