俺は奏穂を追うように部屋を出た。
「空叶、海叶、奏穂ちゃん。忘れ物はない?」
「平気」
「ねぇよ」
「うん、大丈夫だよ。成美さん」
「じゃ、出発!」
秋帆さんの声と同時に、俺たち2家族を乗せた車が動き出す。
何でも今日はショッピングがてらに街を歩いたあと、海沿いでBBQをするらしい。
男は女性陣がショッピング中、先に海へ行って釣りや準備をするらしいけど…
「なぁ、俺も買い物行きてぇんだけど」
やっぱり俺は奏穂と別行動なんてごめんだ。
昨日あんな事があったばっかだし、1人には出来ねぇよ。
「なに?何か欲しいものでもあるの?それとも…奏穂ちゃんがいるから?」
「どっちも」
「あらそ~。よかったわね、奏穂!」
「う、うん…」
こいつ、照れてんな。
分かりやすすぎんだよ。
正直、奏穂と付き合わねぇの?って何度も聞かれたことがある。
そりゃ俺だって奏穂の事は大切だし、守ってやりてぇと思うし。
他の人に告白されても奏穂の方が断然いい女だって思うし。
けど同時に思うことがある。
俺が奏穂に抱くこの思いはきっと、恋愛感情なんかじゃねぇ。
そんなもんじゃなくて、もっとこう…
深くて大事な思い。
俺にとって奏穂は唯一無二だし、
いてくれなきゃ困る。
そんな存在。
奏穂にとっても俺の存在は、少しでもそーゆー風になれてんのかな。
「空叶はどうする?」
とにかく、好きとかそんな簡単な言葉じゃ表しきれねぇ。