冬恋~さいごの贈り物~


そう言い海叶が手渡したのはピンクベースのフェイスタオル。



「あ、ごめん。ありがとう」



「ん。また後行くから。莉玖翔も今日は助かった。ありがとな」



「ううん、全然。じゃまた」



俺たちは今度こそ玄関をくぐった。



「今日楽しかったね」



「うん。まさか奏穂がいるなんて思わなかったけど」



「ふふ。あたしも莉玖翔が来るなんて思わなかっ……っ」



海叶の家の敷地を出た時小石に躓いた奏穂の身体が傾いた。


すぐ横からは車の通る音が聞こえる。



「奏穂っ…!」



咄嗟に塞がっていない方の腕で奏穂を後ろから支える。


瞬間、目の前を一台の車が通り過ぎた。



「莉玖翔…ありがとう」



「…無事でよかった」



後ろから抱きしめるように支えている腕の力を少しだけ強める。



「…りくと……?」



だけど俺はすぐにその腕を緩め、奏穂から身体を離した。


本当は離したくなんかない。だけどこんな事、奏穂は望んでいないから。



「…奏穂。1人で無理しようとせずにちゃんと周りを頼れよ」



それだけ言い残し俺はその場を去った。



「ありがとう、莉玖翔」



背中には小さくも大きくもない奏穂の声が届いた。