俺にとってはどんな些細な集まりでも大切で、何にも代えられない時間なんだ。
「ご馳走様でした。うちのお母さんもだけど成実さんも相当料理上手だよね」
「そうかもな。俺空いた食器とお茶持ってくからコップだけ頼む、奏穂」
「分かった」
「わりぃな。莉玖翔は…」
「課題を元に戻しておけばいいかな?」
「あぁ、頼む」
「うん、任せといて」
無自覚にコロコロと表情を変える奏穂は見ていて飽きない。
照れたようにはにかむ笑顔。
時折見せる切ない表情。
課題と向き合う真剣な眼差し。
難しい問いにぶつかった時に見せる不満そうな顔。
それから…
────海叶を眺める幸せそうな微笑み。
奏穂の視線の先にはいつだって海叶がいて。
沢山の表情を見せる奏穂が面白い反面、切なくもなる。
あんな表情を引き出せるのも海叶がいるからだと思うと、どうしようもない虚しさが俺をおそう。
どうして俺じゃダメなんだろう。
…なんて考えても仕方のない事ばかりが頭をよぎる。
だから俺はそんな寂しさから目を逸らすために、奏穂の想いに見て見ぬふりをしているんだ。
きっと楽しい事ばかりじゃない。
奏穂の表情を見ていればそんな事はすぐに分かる。
本当は気づいて今すぐにでも話を聞くべきなのかもしれない。
だけどまだ俺はたったの16歳で。
笑顔で支えられるほど大人じゃない。
ごめんな、奏穂。1人で辛い想いさせてごめん。
でも今は俺も奏穂の背中を押してあげられるほどの余裕なんてないんだ…
課題を元に戻していると目に入る部屋の隅に畳まれた2組の布団。
朝の奏穂の様子から見ても昨日はここに泊まってたんだろうな…
別に不思議な事なんて何もない。
だって2人は家が隣同士の幼馴染で、おまけに両親だって仲がいい。
きっとお泊まりだって今回に限らずよくある事なんだと思う。



