出かける予定もなかったし結構ラフかも…
莉玖翔が来るって分かってたらもう少し考えたのに…
そう思いながらも開いた袋の中には、そこまで悪くない服たちが入っていた。
欲を言えば少し変えたいけど…酷いわけではないし。
「仕方ないよね」
袖に手を通し服装を整えたあたしは櫛と歯ブラシを手に脱衣所へ向かった。
普段は学校や遊びに行く時しか会うことのない莉玖翔。
つまりは会う時の服装も制服かそれなりに考えた私服なわけで。
こんな不意に会うってなるとさすがの莉玖翔でも緊張しちゃうよ…。
「奏穂、準備出来たか?」
音を聞いてか脱衣所に表れる海叶。
「うん、何とか。変じゃないかな?」
「いつも通りだろ。…ここ、はねてる」
髪を撫でつけられ、朝から体温は急上昇。
「あ、ありがとう…」
ほんと心臓に悪いよ…
「つか来るの莉玖翔だけだし…んな気にしなくていいんじゃねーの?」
「だめだよ!莉玖翔は親友だけど…それでもだらしない姿は見せらんない」
「奏穂、普段からそんなだらしなくねぇと思うけど?」
「それは見慣れてるからだよ。あんな姿、幼馴染の海叶と同姓の芽依くらいにしか見せられないって…」
「…女子も大変だな」
最近は幼馴染のキミにだって違う意味で気を遣ってるつもりだけど…
きっと海叶は気づいてないよね。
少しでも女の子として見て欲しくて努力してるあたしの変化になんて。
「そうだよ」
だってきっとどんなに努力したって海叶の目には''幼馴染の奏穂''っていう風にしか映らない。
それでも頑張ろうって思うのはやっぱり無謀でしかないのかな。
この気持ちをなかったことになんて出来ない。
だったら少しでも多く努力して海叶を好きだったんだっていう証拠を残したい。
形にならなくていい。結ばれなくたっていい。
だからせめて、証を残しておきたいんだ…。



