「まだそんな遠くには行ってねーはずだから。俺たちも行こう」
そう言い海叶はあたしの手を取る。
その手を離すことはなく、海叶は人ごみの中を進んでいった。
…ねぇ海叶。どうしてそんなに優しくしてくれるの……?
小さな頃から知ってるから?
あたしが海叶の…
─────幼馴染だから?
教えてよ、海叶…
あたしは溢れるこの気持ちをどうすればいい─────?
海叶の大きな手の温もりを感じながら、あたしは今にもこぼれそうな涙を必死で抑える。
あたしとは違う、海叶の大きな左手。
「俺の手、絶対に離すなよ。しっかり握っとけ」
そんな何気ない海叶の一挙一動に嬉しくなったり寂しくなったり…
あたしの心は休まることを知らない。
「…うんっ」
今だってそう。
涙が出るほど辛いくせに、このまま時間が止まってしまえばいいのにって。
このままずっと2人でいられたらいいのにって…そんなバカな事を考えてる。
…そんな事出来るはずないのにね。
「───海叶!奏穂!よかった、ここにいた」
幸せな時間は、そう長くは続かない。
「…莉玖翔……」
「皆あっちの神社で休んでるから…行こう」
繋いでいた手は当たり前のように離され、さっきまでの温もりが嘘のように消える。
自分の右手を見てあたしはまた、悲しくなってしまった。
「奏穂?」
「…ごめん!今行くっ」
自分の事に精一杯だったあたしは気づかなかった。
そんなあたしをじーっと見つめる、
優しすぎるくらいの莉玖翔の視線に…───────



