何かを感じ取ったらしい渚桜は、何も言わず何も聞かずにただ私の傍にいてくれた。
渚桜は情報通だからきっと何かは耳に入っているはずで。
それでも何も言わないでいてくれる渚桜の優しさが私は素直に嬉しかったんだ。
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『ナイスシュート、芽依!』
ハイタッチを促す直耶くんに私は遠慮気味に応える。
今日は公園のゴールでバスケットボール。
『芽依どした?元気ねーけど…』
いけない!今は遊びに集中しないと…皆に迷惑かけちゃう!
『う、ううん!ごめん、ぼーっとしてただけっ。直耶くんもナイスアシストだよ!』
『そっか、ならいいんだけどっ!さんきゅっ』
直耶くんはそう言って私の頭をポンっとなでた。
いつもだったらただ恥ずかしいだけの行為が、なんだか少し複雑で。
素直に喜べない自分がいた。
この手は、直耶くんは、皆の人気者。
私だけが独占しちゃいけない…。
考えないようにしていても気づけば今日の事だけが頭を支配していて。
ショックや不安を拭いきる事なんて出来なかった。
『あ、じゃあ私この後用事あるから。じゃーね!』
帰りのチャイムが鳴ると私は逃げるようにうちへ帰る。
直耶くんと一緒に帰らないようにするために。
私は自分を守るためだけに直耶くんを避けたんだ。
『私、さいてーだ…』
あんなに真っ直ぐ想いを伝えてくれた彼を避けるなんて。
頭ではそう思っても、私にはそうする事しか出来なかった。
もう一度皆と笑って過ごすには、こうするしかなかった。



