────────12年前。
あたしたち家族はある町の住宅街に越してきた。
見渡す限りのたくさんの家と、その中にポツンと佇むようにある公園。
そして隣の家に住んでいたのが
「────ねぇ、秋帆(アキホ)?秋帆じゃない?」
お母さんの高校時代の親友だったという成実(ナミ)さんの家族。
────────室沢家だった。
「やだー!こんな所で会えるなんてー!元気にしてた?成実っ!」
「元気元気。そこにいる子供は…娘?」
「そうそう!ついこの間、4才になったの!」
「うそ!うちの息子も4才!どうやら同級生みたいね」
「すごい偶然!これからよろしくね~!」
「こちらこそ。ちょっと海叶連れてくるわね」
こうして成実さんに連れられてきた男の子。
「わぁ、かわいい!成実にそっくりねっ。ほら奏穂。ご挨拶は?」
「う、うん。あたし、せざきかなほ…」
「かなほ?ぼくはむろさわかいと!よろしく、かなほ!」
そう言いかいとはあたしのほおにキスをした。
「ちょ、海叶?何してるの!」
「だって、おとうさんがいつもやってるもん!」
「もぉ~。この感じは完全に父親譲りね…」
「ふふ。可愛いじゃない!かなほも今ので恋に落ちちゃったかもしれないわねっ」
4才。
これがあたしと海叶の出会いだった──────────