「あら、夕李くんじゃない。
あ、もしかして今日は"例の"彼女連れ?」
カウンター席には、男の子がふたりと女の子がひとり。
よく見たことのある制服だけどどこのだっけ、とふつふつ考えていたら、後ろのテーブル席で何かを書いていた綺麗な人が顔を上げて夕李の名前を口にしたから、つられてそっちを見る。
あれ……女の人かと思ったけど。
もしかして、男の、人?
「こんにちは、アサギさん。
例の、ってやめてください。……彼女ですけど」
「高校生カップルうらやまし~!」
「サキさん。
夕李くんの彼女があきらかに困惑してますよ」
美人さんがそう言って、「どうぞ」とカウンターの席を勧めてくれるから、3人組のお客さんと椅子ひとつ間を開けて、夕李と並んで腰掛ける。
夕李にはアサギさん、美人さんにはサキさん、と呼ばれたその人は、「ちょい奥行ってくるね」とカウンターの奥にある扉の奥に消えたから、お店の人らしい。
「ふふ、騒がしくてごめんなさい。
夕李くんいつものカフェオレにする?」
「はい、それで。ひのは何がいい?」
テーブルに乗せられたおしゃれなメニュー。
目を通して悩んだ末にカモミールティーにした。あまり詳しくないから全部はわからないけれど、ハーブティーの種類が豊富みたいだ。
「カモミールティー、と、夕李くんがカフェオレ。
こっちのシフォンケーキは、夕李くんの彼女だから特別にサービスってことで」
「え、ありがとうございます」
ふわふわのシフォンケーキ。
美味しそう。メニューにケーキの種類も色々あったけれど、悩んだ末にやめたからうれしい。もぐもぐと早速いただいていれば、じいっと感じる視線。
「かなさん、女の子に優しいずるい~っ。
ぼくもシフォンケーキたべる!」



