「どういたしましてー。
……っ、じゃなくて!こら!おねーちゃん!」
「ちょっと素直になってみようかな」
「……んんん?」
「夕李と……話そうと思って。
嘘ついてたことも謝りたいし、いまも綺世のこと好きだって、ちゃんと言ってみようと思うの」
なんて言われるかはわからないけど。
きっと、優しい表情で「知ってた」って言ってくれるような気がする。……夕李は昔から、そうだったのに。
なにをいまさら、真実をさらけ出すことを怯えていたのか。
開き直ってみたら、案外単純な自分の感情のカラクリに、なんだか拍子抜けしてしまった。
……明日の放課後にでも、夕李の学校前で待ち伏せしてみようかな。
地元の男子たくさん通ってるから、さんざん冷やかされそうだけど。素直にならなかった、自分への罰というか。
「う、うーん……
なんか思ってたのと違う形になったような気がしなくもないけど……おねーちゃんが大丈夫になったんだったら、なんでもいいや」
「……ふふ、ありがとうねかのちゃん。
さてと。それじゃあ、勉強再開しましょうか」
「げ、現実連れてこないで……!」
「現実からは逃げられないわよ?」
「おねーちゃんの鬼……!」
叫ぶように嫌な顔をする妹にくすりと笑ったら、つられたようにかのちゃんが笑うから。
ひとしきりふたりで笑い合った後、「なんで笑ってるんだろうね」と現実に引き戻される中。
もう一度。
「ありがとう」と、かのちゃんに向けて心の中でお礼を告げた。



