「……わたしがわがまま言ったの。
夕李とおそろいのネックレスが欲しいって」
言いながら、自分がつけているネックレスのチェーンに指を添わせるひの。
その表情はどこか哀しげにも見えなくはねえけど、たぶん、彼氏を想って思いにふけてるだけ。──ただどこまでも特別な男を、想ってるだけ。
「ネックレス以外にも、何かあるだろ」
「……、そうね」
隣を歩いているせいで、距離は近い。
すっと触れ合ったひのの左手をそのまま右手で絡め取るように繋げば、恋人つなぎは拒否するひの。……そのくせ、普通に手を繋ぐのは構わないんだから罪な女だ。
『……あなたのことが好きよ、綺世』
与えられた時間があまりにもしあわせで濃密なものだったせいで、手放した瞬間俺の中には何も残らない。
"お揃い"を探していれば必然と近づく距離で、ふわりとひのから香る甘い匂い。無意識に目をやった先には、所持を意味する独占の印。
「ピアスならブレザーの襟とかに留められるけど……
夏だし、何より女子は制服がセーラーだものね」
「、」
「あ、でもこのピアスかわいい。
こまめに手入れしなきゃいけないけどイヤリングより楽だって聞くから、わたしもピアスホールいっそ開けてみようかな」
「………」
「……綺世?聞いてる?」
長いまつげに縁取られた無垢な瞳が、俺を見上げる。
どうしたの?と言葉通り動くくちびるから視線を逸らして「いや、」と言葉を濁した。……終わった関係だっていうのに、こうやって狂わされ続けるのは俺の方。
「もっと単純に考えてもいいんじゃないか?」