「音の前で一緒にいるのもあれだろうけどさ。

ひのちゃんも、夏休み一緒に遊びにいく?」



「んー、それはいいんだけど……

色々予定があるから、ちょっと忙しいかもしれなくて」



幸い。今日は体育がなかったおかげで、散々騒いだキスマのことがほかのヤツに大きく広まるわけでもなく。

あっという間に時間は昼休み。いつものように話すも、さっきからひのの意識は机に置いたスマホに向きっぱなしだ。……というのも。



「ひの、なんで今日そんなにスマホ鳴ってんだよ」



「……やっぱり気になる?」



「みんな気になってたよー。

1分に2回は鳴るじゃんー!ずっと鳴りっぱなしじゃんー!」



「……夏休みに、地元で集まろうって話が男子の方で出てるらしくて。

それを夕李から昨日聞いたから、今日の朝のうちに女子にも話を回したの」




そのせいで、返信が途絶えないらしい。

女子だけじゃなく、男女混合のグループでも会話しはじめたせいで通知が鳴り止まないと嘆くひの。



「通知切れば?」



「普通に喋ってくれるだけならとっくに切ってるわよ。

長い間参加してないと名指しで呼ばれるから放っておくにも放っておけないのよ」



どうせ聞きたいのは夕李とのことだろうけど、と。

昼飯を終えたひのが一度スマホに触れて返事すると、そのまま電源を落として「おやすみ」と机に突っ伏した。



「……お前行動がいつも唐突だよな」



「夕李と夜中まで喋ってたから眠いの……

ひさびさにゆっくりいろんな話聞いてくれたからって、調子に乗ってたくさんしゃべったわたしも悪いんだけど」



言うが早いか、数十秒後には完全に睡眠に入る。

……ったく、まじでマイペースだな。