「いままでで、いちばん後悔してるのは間違いなく綺世なんだよ〜。

……でもな。ただ純粋に、あいつにもどってきてほしいって思ってんのは俺らも同じだろうな〜って」



「そうだねー」



「……音のことがなくたって、全員もどってきてほしいだろ。

たったひとりのおひめさまによ」



ゆるくない声で。心の底からの思いで。

そう言ったみやに「そうだな」と返したところで、かちゃりと開くはずのない扉が音を立てる。反射的に、全員が一斉にそっちに視線を向ければ。



「え、あやちゃんー!?

音ちゃん送って帰ったんじゃなかったの!?」



「……送ってからもどってきた」



……まためんどくせーことを。

なんかあったのか?と聞けば、「いや」と一言返してくるだけの綺世。そのまま定位置に座る姿は、不機嫌というよりも。




「……あやちゃん機嫌いいねー」



どちらかといえば、ご機嫌に見える。

めずらしいなとその姿を目にしていれば、綺世のスマホが着信を受けた。どうやら、ひのを送り届けた万理からの連絡らしく。



「……駅まで?」



『───』



「……わかった」



端的に会話を終わらせ、電話を切る綺世。

そのまま誰にともなく「飯行くか?」と振られた話題に、飛びつくのはゆゆ。……たまに飯行ったりしてるけど、ゆゆはいつも一緒に行けねーしな。



万理は?と聞けば、あいつもすぐ合流するようで。

結局、全員集合するらしい。こないだひのの彼氏と会うのにファミレスは行ったけど、完全に5人だけで飯に行くのはすげーひさびさな気がする。