「んんん」



「ふっ。お前らはなに騒いでんだ?」



「みやとそなたがじゃれてるだけよ」



頭に乗せられた腕をのけようとしたけれど、予想以上に体重をかけられて動けない。

のけてよーと後ろを振り返れば、視界に入ってくるのは整いすぎてるってほどに綺麗な顔をした男。……鳴海 綺世(なるみ あやせ)。



「ああ、いつものことだな」



──わたしの、元彼。

この高校を受験したときに出会った人で、そこから仲良くなって、入学した後は波長が合うからとどちらともなくすぐに付き合うことになった。



けれど結局、長続きせずに冬には別れた。

だからといって気まずいわけでもなく、それなりに円満。いまでもこうやって簡単に触れ合えるほどの仲だ。




「でしょ?

というか綺世、腕重いからのけて……っ」



「腕置きにちょうどいいだろ」



「わたしが小さいってばかにしたでしょ……!」



身長150センチしかないんだもの……!

綺世もみやもそなたも、170センチは余裕であるからって小さい小さいってすぐばかにして……!



「ふ。冗談だよ。

ほら、お前の好きな飴やるから口開けろ」



「あーん」



「……ほんと単純だな」