「は!? お前ここまで歩いてきたのかよ!?」



そう言って驚愕に目を見張るのは、みやの隣にいた彼。

今日もやけにまぶしい金髪。五十川(いそがわ)そなたは、みやと頻繁に一緒にいる上にふたりとも髪色が明るいせいで、「黄金コンビ」なんて呼ばれてる。



「……そんなことした日には、たぶん満員電車に乗った日よりも死んだ顔してると思うわよ」



「ふっは。そうだろうねえ。

タクシーでも拾って乗ってきた〜?」



「どこの贅沢女子高生なのよ。

違うの。自転車の後ろに乗せてもらって来ただけ」



「ん?誰に乗せてもらうんだよ」



「……彼氏?」




ぽつりと。

こぼせば、「ん?」とふたりともに不思議そうな顔をされた。それからみやがゆるく微笑んで、「彼氏いたの〜?」と聞いてくる。



「いたっていうか……

はっきり付き合おうって言い出した関係じゃないから記念日とかそういうのはないけど、一応ね」



「いつからだよ……!

つーか誰だよ気になんじゃねーか!」



「うちの高校じゃないわよ。

ここから5分のところにあるじゃない。男子校」



「ああ、あるねえ。

このあたりが地元のヤツが近いからって理由で入るって聞いたけど、ひのの地元もそう遠くなかったな〜」



そうそう、とうなずく。

わたしの地元は小中一貫でほかの学校が離れたところにあったから、各学年1クラスしかなかった。そしてそのうちの男子は、ほとんどそこに通ってる。



地元から近いという点で言えば、わたしの学校もそう遠くないけど。

偏差値がすこし高めなのと、バスではなく満員電車でしか行けないという利便性の悪さで、地元からここに通っているのはわたしだけだ。