「いや、じゃ、ない……」



「うん。

ひのが、"かのがこれ観たい"って言ってたって」



っ、お姉ちゃん……!

たしかにテレビで流れている映画の予告を見て、何気なくそう言ったことは自分でも覚えてる。でもまさか、夕ちゃんにそれを伝えるとは……っ!



「で、でも夕ちゃんこういうのみないよね?」



「まあ自分からは絶対観ねえ、かな?」



「ほらっ」



「でも今日は、かのとデートしてるし」




ポチッ、と確定のボタンを押す夕ちゃん。

慌ててチケット代を出そうとしたのに、「いいよ」とそれも止められてしまった。……しかも。



「ポップコーンとかは?」



「だ、だいじょうぶ。今おなかすいてない……」



ほかにも気にかけてくれて、なんだか嬉しいような申し訳ないような。

遠慮したら「水分は摂っとかないと」と言われて、結局冷たいミルクティーを買ってもらってしまった。



「ありがとう、夕ちゃん」



「ううん、全然。

かのの嬉しそうな顔見れて、俺も嬉しい」



っ、なんでこんなにサラッと恥ずかしいこと言えちゃうんだろう……?

わたしは隣を歩くだけで緊張して、お腹もすかないのに。