今まではずっと、妹みたいに可愛がってもらえるだけだった。

お姉ちゃんがいたから、夕ちゃんはかのとも仲良くしてくれたけど。それがなければもっともっと距離が遠かったんだと思うと、心臓がギュッてなる。



「かの」



夕ちゃんが、差し出してくれる手。

おそるおそる重ねれば、強く握ってくれる。



……すき、だなあ。



夏の太陽みたいに明るく笑う顔も。

わたしよりおっきな、男の子らしい手も。



「そういえば、夕ちゃん。

かの何にも聞いてないけど、どこ行くの?」



ふと思い出して、問いながら隣を見上げる。

昔から知ってるからこうやって歩くのは普通なのに、いつもと違うのは、手が繋がれてるってこと。




「んー、まずは映画?」



「"まずは"……?」



「まあまあ、ついておいで」



……そういや、お姉ちゃんと綺世さんはどこにデートに行ったんだろう。

お姉ちゃんがいつもよりおっきいバッグを持って出かけていったから、行き先はかぶらない、かな?



「夕ちゃん……あの。

もしかしてだけど、映画、これみるの?」



「ん?嫌だった?」



ショッピングモールの上階にある映画館。

言われるがままついてきたのはいいけど、夕ちゃんがチケットを発券しようとしている映画は少女漫画を実写化したものだ。