バタバタと、部屋から服を掴んで持ってくると、お姉ちゃんの前にバッと出して見せる。

バッグを持って家を出ようとしていたお姉ちゃんの腕を、がっちり掴んだ。



「ねえお姉ちゃんこれとこれだったらどっちがかわいい!?

ねえねえお姉ちゃん待ってようううう……!」



「ちょっ、かのちゃん離して……っ。

家の外で綺世待ってるから離して……!どっちも可愛いわよかのちゃんならなんでも似合う!」



「やだっ、たすけて……!」



泣きつくけど、お姉ちゃんは非情にも家を出ていってしまう。

それから、夕ちゃんがすでに家の前で待っていることを教えられて、慌てて自室に駆け込んだ。



待ち合わせ時間まであと10分以上あるのに……!



紺色のリボンがついたワンピースに着替えて、すこし乱れた髪を整える。

それから荷物を詰め込んだバッグとスマホを手に持つと、サンダルに足を入れて外へ出た。




「ゆっ、夕ちゃんおまたせ……っ」



「もっとゆっくり準備しても良かったのに」



スマホを見ていた夕ちゃんが、わたしの声で顔を上げる。

花火大会でデートしようと誘われ、今日はその当日。本当はもっと可愛くしたかったのに、お姉ちゃんとデート日が被ってしまったのが残念だ。



「大丈夫!行こう!」



「ん、」



夕ちゃんの隣に並ぶと、彼はすぐさま「かわいい」とわたしのことを褒めてくれる。

それだけで、思わず真っ赤になってしまった。



いつか、夕ちゃんに言われてみたかったこと。