「かのね……

お姉ちゃんのことが大好きで、自慢で、」



みんなに憧れられるようなお姉ちゃん。

一時期金髪にしだした時はさすがにびっくりしたけど、それでも大好きなことには変わりなかった。



「……でも夕ちゃんのことも、好きだよ」



上手く伝わっているだろうか。

もっとかのが上手に話せたら、夕ちゃんのことを慰められるかもしれないのに。



「知ってるよ」



「お姉ちゃんとも、綺世さんとも、ちがうよ。

かの、夕ちゃんだから、すきなんだよ……」



無意識に、視線が落ちる。

なんでもできるお姉ちゃんが、綺麗に着付けしてくれた桜模様の浴衣が視界に入った。




「……それも知ってる」



ギュッと、握った手の力が強くなる。

わたしが力を入れたわけじゃなくて、夕ちゃんがその力を強めてくれた。



「今度デートしよう、かの」



「えっ……」



「付き合おうって言うのは、

もうちょっと時間かかると思うけど……」



この人混みの中でも、夕ちゃんの言葉だけ鮮明に聞こえる。

道の脇に逸れてから立ち止まると、一際綺麗な花火が空に上がった。



「……今後は、かのと一緒にいたいって思うよ」