【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-




俺らが復縁してても、どうせすぐに別れてた。

そう綺世はつぶやくけど、きっと先輩は綺世の前でいつも"そう"だったんだと思う。意地っ張りで、わたしに嫌味を言ってきた先輩。



でも、彼女がどれくらい綺世のことを好きなのかは、わたしもそれなりに知ってるつもりなのだ。

あの頃、ライバル、だったんだから。



「……先輩は綺世に新しく好きな女の子ができて、悩んだ末に苦しんであきらめてくれたけど。

わたしはそう簡単に離れない女だから覚悟してよ?」



「先に手を離したお前が何言ってんだよ。

……安心しろ。俺が片思いした女はお前だけだ」



「っ、」



「キスしたくなっただろ?」



「うるさい……」




したくなったけど。抱きついて離れたくないって思ったけど。

それを自信満々に言われるのはムカつく、と顔を顰めたわたしを見て、綺世はくすりと笑う。そのまま流れるような動作でくちびるを奪っていくから、キス魔だなって思った。



はじめて付き合った時って、

こんなに綺世に求められてたっけ……?



「もう…、」



「……あ、」



外では恥ずかしいって言ってるのに。

遠慮ないんだから、と呆れながらも口元がゆるむわたしはどうかしてる。バカップルっぽく白昼堂々キスを交わしていれば、耳に届いた声。



言っておくけど、今の『あ、』は綺世のものじゃない。

なんならわたしでもない。……ということは、つまり。



「かの、ちゃん……と、夕李……」