『……じゃあその彼氏と会わせろよ。
どれだけいい男か俺が判断するから』
「お断り。もう巻き込まないで」
着信拒否するわよ、と電話を切ろうとしたら。
ひの、と名前を呼ばれて「今度は何?」とあきれたような声になる。ほんとにもう、関わらないで欲しいのに。……どうして。
『俺が今でもお前を好きって言ったら?
……あの時別れたの、後悔してんだよ』
「わたしはしあわせにしてくれる人と一緒にいたいわけじゃない。
しあわせになれる人と、一緒にいたいの」
『……ほんと意固地なとこは変わんねえな』
わかったよ、とつぶやいた彼は。
別れる気になったらもどってこいなんてふざけたことを言って、一方的に電話を切った。相変わらず自分勝手な男だ。
「なんて言ってたのー?」
「んー……好きって言われたけど、断った」
「えっ、好きって言われたの!?」
「やっとヨリを戻した相手がいるんだから、簡単には靡かないけどね。
でもまあ、あの頃は悪魔みたいな男を好きだったわたしもわたしだけど。……さて、そろそろ帰ろうかな」
「送ってく」
いつものように。
そう言ってくれた綺世にありがとうと返して倉庫を出ると、すぐに恋人つなぎされた。だからわたしもぎゅっと握り返して、口を開く。
「……不安にさせたくなかったのに、
結局嫌な気持ちにさせちゃってごめんね」



