高校は、秘密を抱える生徒たちが集まる場所。

中学のとき以上に本音を隠して生活する万音にとって、きっとひのちゃんは唯一本当の友だちと呼べる存在で。



綺世とひのちゃんがヨリをもどす計画を立てたとき。

迷わずに「わたしが姫のフリをする」と受け入れてくれたけど、ちょっとそわそわしてた。仲良くなれたらいいな、って何気なくつぶやいてたのも知ってる。



だからこそ、ひのちゃんが万音と仲良くなってくれたことは俺もうれしいし。

こんな風に友だちと仲良くやり取りできるなら、たまにはダブルデートだって許してやろうかなってなるけど。



「じゃあお泊まりしてもいい……?」



「は?」



……それとこれとは別なわけで。

お泊まり?と聞き返せば、こくこくうなずいて「うん!」と答える万音に、呆れてため息が漏れる。



呆れすぎて言葉にするのもめんどくさい。

万音を引き寄せてソファに十分なスペースを作った後、そのままトサッと倒した。……いや、押し倒したっていう方が正しいかな。




「……あ、れ?

なんでわたし押し倒されて、」



「お泊まりするってことは、俺のこと放置するんだ?」



……何言ってんだろうね俺。

修学旅行だって日程はかぶってないんだから、万音が家にいない日もある。友だちの家にお泊まりするなら、たかが一泊程度。……なのに。



「俺のことなんか忘れて、

ひのちゃんと楽しくお泊まりするんだ?」



「……そんなこと言ってないもん」



「でもそうでしょ?」



変にモヤモヤして、不完全燃焼。

何か言いかける万音がそれ以上言葉を紡げないようにくちびるで塞ぐと、次第に蕩けていく瞳。求めるように腕を伸ばされて、深みに嵌るのは結局俺で。