はじめは、兄妹だったと思う。

俺らの両親が再婚したのは、俺と万音が小学4年のときで。そこから2年は、間違いなく普通の兄妹だった。



だけど中学に入って、思春期とかそういうものとは別で、万音に避けられてることに気づいて。

問い詰めたら、俺を兄として見れなくなったからだって泣きじゃくった万音のことを、ただ純粋に愛おしいって思った。……妹じゃなく、ひとりの女の子として。



先に好きになってくれたのは万音のほう。

だけど、俺の方が惚れ込んでると思う。



「……ひのとふたりで出かけるの、

なんで綺世も万理も許してくれないの?」



綺世と万理はふたりで出掛けることあるじゃん、と。

さっきからずっと拗ねている話題であるそれを口にする万音。……たしかに俺と綺世は、ふたりで出かけることあるけど。



それは親戚関係の用事だったり、百夜月の用事だったりでプライベート的なことじゃないし。

ダブルデートはちょくちょく許してあげてるんだから、これでも甘い方だと思う。



首筋に寄せていた顔を上げた万音に向けて、これ見よがしにため息をつく。

その拍子になんとも言えない顔をする万音。




「……ひのちゃんが今、

俺らの姫の立場にいることは知ってるよね?」



「……わたしも一緒にお祝いしたもん」



「護衛も何もなしで、万音と出掛けてふたりが危険な目に遭ったら困るでしょ。だからだめ。

……っていうのはほんとだけど、」



「だけど……?」



「……ひのちゃんの家で遊ぶか、

うちに来てもらうかならいいんじゃない」



言えば、ぱあっと顔を輝かせる万音。

うれしそうな顔しちゃってさ。……最近は口を開けばひのちゃんひのちゃんって。俺よりひのちゃんのことばっかり。



でもまあ……仕方ない、か。

中学は同じところに通ってたけど俺とのほんとの関係を知られたくなかった万音は、友だちの前で本音なんか見せたことないし。