3人姉弟なのかな、と思っていれば向こうから声をかけられて。

話しかけてきたその子に「どうしたの?」と尋ねる。近くで見れば見るほど、綺麗な子だな。



この子は、すごく大人っぽく見えるけど制服だし……

たぶんわたしと同い年か、ひとつ下くらいだ。



「……あの、このあたりで、

佐藤のおばあちゃんの家ってどこかわかりますか?」



「うん、知ってるわよ」



佐藤のおばあちゃんって言えば、わたしたちのような地元の子どもが小さい頃からお世話になっている人だ。

遊びに行ったらお菓子を出してくれたり、畑でとれた果物をおすそ分けしてくれたり、みんなのおばあちゃんって感じの人。



「あ、えっと。

このあたり全然詳しくないので教えてもらいたくて」



そういえば最近佐藤のおばあちゃんをあんまり見かけないって、夏休みの地元会でみんな言ってたけど。

佐藤のおばあちゃんの孫かな、と綺麗なその子に「えっとね」と来た道を振り返って指さす。




「この道をひたすらまっすぐ行ったら、見ただけでわかるぐらい幅の広い道に出るの。

そこを右に曲がって、またまっすぐ行ったらお寺があるんだけど、そのあたりにいくつか民家があるのね、」



「はい、」



「その民家のひとつで、畑のいちばん大きな家よ。

今の時間ならその民家のおばあちゃんおじいちゃんたちが畑にいると思うから、わからなかったら聞いてみて」



つらつらと、佐藤のおばあちゃんの家までの道のりを彼女に伝える。

できるだけわかりやすく伝えると、彼女は「ありがとうございます」と丁寧に頭を下げた。



どういたしましてと微笑めば、彼女がハッと思い出したようにわたしを見る。

出会ってまだ数分も経たないけど、なぜかちょっと苦手だと思った。



「わたし、佐藤いのりって言います」



絵画から抜け出してきたんじゃないかと思うほどに、綺麗なその子。

ただ名前を名乗っただけなのに、すごく不思議な感じがして。綺世と繋いだ手に、自然と力がこもる。