……本気でもう、綺世しか見えてないんだけどね。



「ねえ綺世……ちょっとだけ、屈んで」



そう言ってすこし屈んでもらって、首裏に腕を回す。

恥ずかしいけど。すごく恥ずかしいけど、綺世にだけ聞こえるように小さく「好き」とつぶやいた。



「……ああ、俺も」



「……足りない」



ちょっとだけ困らせてやろうと思って。

そう言ってゆっくり自分からくちびるを重ねてみたら、わたしに合わせるように応えてくれる。恥ずかしいから短く終わらせようとしたのに深められて、結局彼にペースを握られて。



ゆっくり離れた頃には、うわあって顔をしてる万理と、ニコニコしてる万音。

うん、万理に同意するわけじゃないけど。たしかにこの4人でダブルデートするのは、ちょっと気力が必要な気がする。




「ひの」



「……なに?」



どれだけ恥ずかしくても優しい声で名前を呼ばれたら、返さずにはいられない。

顔を上げたら耳元にくちびるを寄せるから、またキスされるのかと思ってちょっと身構えるわたし。



「……愛してる」



「え、」



──なのに零されたのは、最上級の愛の言葉。

恥ずかしいのかうれしいのかわからないけれど、ぽろっと涙が溢れてきて。そんなわたしの行動さえ愛おしいとでもいうように抱きしめてくれるから。



……彼の腕の中で、

もう二度と離れないとひそかに誓った。