「ふふ、秘密。

わたしとひのだけの秘密だよー」



「そうそう。

ほら、女の子の会話だから邪魔しないで?」



聖蘭と城藍の文化祭は、運悪く開催日が同日。

そのため見に来れなかった彼女に手渡したそれは、万理の文化祭でのウエイター姿の写真だ。ちなみに盗撮じゃないから。……本人に気付かれないようにこっそり撮影しただけだから。



逆にわたしが万音からもらったのは、綺世の寝顔写真である。

理由は忘れたけど、この間万理の家に綺世が泊まったようで。そのときにこっそり写真を撮っておいたらしく、万理の写真と引き換えにくれた。ありがとう万音。



「ねえ綺世、万音とひのちゃんの"秘密"って言葉ほど怪しいものってなくない?」



「……そうだな」



怪しまなくて結構です。

むしろ知らないフリしてくれて構わないから。あっさり信じてくれちゃって良いから。怪しまれるとわたしと万音が精神的に追い詰められる。




「まあいいか。あとでじっくり聞けば良い話だし」



「じっくり、な」



こわい……!強調しなくて良いのに……!

しれっと何も知らなかったことにしておいてくれればいいのに……!



万音と顔を見合わせて「やばい」と思うけど。

綺世に意地悪されるのは嫌いじゃないとか思ってしまったわたしは、どう考えても1回頭を冷やしたほうが良い。完全に恋愛で脳内がバカになってる気がする。



「ちなみに正直に見せたらゆるしてくれるの……?」



「さあな。

……どっちみちいじめる可能性はある」



え、無理じゃない?どう考えてもわたしは許してもらえなくない?

万理は文化祭の写真が盗さ……じゃなかった、勝手に撮ったことを除けば大丈夫だと思うけど、どう考えても寝顔はアウトじゃない?