そこにひのが行きたいと言い出したのは、つい数日前。

夏に水着を新調したにも関わらず、着ないのがもったいないと誘ってきたのは構わない。むしろほかの女より俺を誘ってくれたのもうれしいとは思うけど、だ。



「い、いいの。みんなで海行ったんでしょう?

また行くのもあれだし、ふたりでゆっくりしたいから……」



「……まあ、いいけどな」



ふたりでのんびりできんなら、俺もなんでもいい。

ただ、お前がそわそわしてるから気になってるだけで。ヨリもどしてからデートらしいデートはしてなかったせいで落ち着かねえのかと立てていた予想は、遥かに甘かった。



「着替えて、出てくるそこで待ち合わせな。

お前の方が遅いだろうが、万が一先に出るならほかの男に声かけられねえように気をつけろよ」



「うん。……着替えてくるね」



絡めていた指を離して更衣室前で別れ、待たせないように手早く着替えを済ませる。指輪はなくさねえようにと、わかるところに入れたあと。

ロッカーに荷物を入れシャワー前を抜けて、待ち合わせた場所で待っていればそう経たないうちに出てくるひの。……ちょっと待て。




「……、お前、」



「わ、かってる。言いたいことはわかってるから。

お願い……恥ずかしいから言わないで……」



きゅ、とかるく手を握られて、「わかった」と髪を撫でてやるしかない。

ひのが着てんのは黒のビキニで、下心なんかなくとも男の欲を駆り立てられる。正直すげえそそるけど、こんな人目に付くとこで恋人らしいことも出来ねえんだよな。



「……屋内と屋外、どっちがいいんだ?」



「天気いいから、屋外行こう……?」



屋外に出ると、入ったプールの中は日光で温まってるから水温はぬるめ。

冷たい水でひのが身体を冷やすよりはマシかと、あまり人のいない隅の方で、その腰を抱き寄せて密着させる。



「ちょっと……綺世、」