「あいつ、お前の妹と付き合ってるのか?」



「……かのちゃんが、わたしに言えなかったけどずっと夕李のこと好きだったんだって。

まあわかりやすいから夕李も気づいてたし、花火大会に行った時にかのが告白したらしいわよ。付き合ってないって言ってるけど、時間の問題じゃない?」



「……へえ」



あいつがもし、ひのの妹と結婚するとして。

俺はまあ手放す気ねえから、結婚するとして。……どう考えてもあいつと義理の兄弟にはなりたくねえな。せめてもの救いは俺が立場的に兄貴ってことだ。



「へえ、って何?

……もしかしてかのちゃんが昔よりも綺麗になったから、ほんとはかのちゃんのこと狙ってる?」



馬鹿かこいつは。

俺がどれぐらいお前のこと──、と言いかけて。どことなく聞き覚えのあるフレーズに、記憶を探る。



……もしかしてとは、思うけど。




「お前……

花火行った日に、俺が妹に『綺麗になった』って言ったこと気にしてるのか?」



ぴく、とひのが肩を揺らす。

普段なら気づかなかっただろうそれも、がっつり指を絡めてるせいですぐに気づいた。へえ、とつぶやく自分の笑みが増してるのはわかる。



「……妹に嫉妬するぐらい俺のこと好きだったのか」



「っ~~、うるさい……

綺世だって夕李に嫉妬して花火大会の日にいきなり痕つけてきたくせに……!今日で夏休み終わるのにまだちょっと残ってるんだけど!?」



どれだけ強くつけたの!?と目を見張ってるひの。

強くつけたんじゃなくて、夏休みお前とふたりで過ごしてて無防備に眠ってた時に上書きしただけだけどな。……襲わなかっただけマシと思え。



「それにしても、海じゃなくてよかったのか?」



ひのの地元から、バスに乗って揺られること約30分。

街の端にある公共プール。スライダーとかがあるわけでもねえ普通のプールな分、客は小さい子どものいる家族連れや小学生がほとんどだ。