「ふふ、夕ちゃんありがと。

あのね、髪のアレンジもおねーちゃんがやってくれたんだよっ」



「だと思ってた。相変わらず器用だな」



肩につかないボブのかのの髪は結べないから、代わりに顔の左側で、和柄の紐を髪に編み込む形にした。

浴衣に合うような色合いにしたから、自分でアレンジしておいてなんだけど妹がかわいい。



一方わたしは長い髪をひとつに束ねて、こういうときにしか使えない大きめの花の飾りを挿してる。

こっちも和柄模様の赤い花で、紺と白っていう落ち着いた色合いの中に、すこし目立つ色を入れただけ。



「こういうイベントぐらい、

女の子はおめかししなきゃもったいないじゃない?」



「ふ。お前らしい」



似合ってると言われれば、女の子はうれしいもので。

ありがとうとお礼を言いながら彼を見上げる。夕李は夕李でかっこいい。カジュアルだけどおしゃれだし、振り返る女の子がいてもおかしくない。




「あ、念のため言っとくけどお前らはぐれんなよ?

特にかの。お前スマホ持ってねーし、絶対俺らのどっちかから離れねえようにな」



「もー、子ども扱いしなくてもだいじょうぶだよ」



「どうだか。お前危なっかしいし」



夕李の言葉で、むうと拗ねたように頬をふくらませてるかの。

ふっと笑って、アレンジしていない右側の髪を撫でてあげたら「おねーちゃん好き」と抱きついてきた。かわいい。



「はいはい、お前らほんと仲良しだな。

屋台見て回ろうにもすげー人だけど、どこで見る?」



遠くからでもある程度見えるしな、とつぶやく夕李に「あ」と記憶をたどって口を開く。

しばらく揺られたバスを降りて人の邪魔にならないように横に移動すると、次に降りてきた妹の手を引いた。わたしの隣に並んだ彼女が、ぎゅうっとわたしの腕に自分の腕を絡ませる。



「去年……綺世に、綺麗に見える場所に連れていってもらったの。

人混みからちょっと離れるから屋台とか行けなくなるけど、それでもよかったらそっち行く?」