あいつらがまだ、付き合ってる時からこっちは好きだったんだよ。

……それこそ、もちろん俺よりもとっくに昔からあいつのことを好きだった綺世には敵わねえって思ってたけど。



「でも、みやちゃんもずっと言ってたじゃーん。

……奪いたいとは、思わなかったのー?」



僕あやちゃんのことも好きだけどー、と。

ほっそいひのの隣に空いたスペースに腰掛けたゆゆが、こてんと首をかしげる。



「はっ。あいつがそれ言ってる時点でおかしーだろ」



「……?」



「お前は知らなくていい。あいつとは個人的に話す」



それこそ、ひのが綺世と今度こそうまくいったら。

ちゃんとひのがしあわせだって笑えるようになったら、みやと話をする。……たぶん、あいつだって公にその話はされたくないだろーからな。




「つーかお前、明日の夜バイト代わってもらえたのかよ?

花火大会で屋台出してホットドッグ売るからって駆り出されてたんだろ?」



「ふふー。

彼女いないヤツに押し付けたからだいじょうぶー」



「………」



可哀想だな押し付けられた後輩。

どうせ百夜月の下っ端でここでバイトしてるヤツに、幹部権限で押し付けたんだろ。何気にこいつのことは敵に回したくない。色々めんどくさそうだから。



「ひのちゃんのことは誘わないのー?」



「……綺世が『断られた』って言ってなかったか?」



まあ、ひのはけじめつくまでは好きって言わねーみたいだし。

その気持ちはわかんなくねーけどな、と突っ伏して完全に眠ってる彼女が身じろぎしたことでさらりと流れる髪に触れた。当たり前だが、あの"痕"はもう残ってない。