【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-




どこまでも自分勝手なことはわたしがいちばん理解してる。

だけど好きって気持ちが止められなくて、むしろ別れてからの方が加速してるような気がする。もっともっと好きになってしまいそうで怖い。



「あれ、そなちゃん……!と、ひのちゃん!?」



「おー。はよ」



「ふたりなんてめずらしいねー!

あっ、いつもと違うとこだけど個室でいい?」



ゆゆのバイト先についたら。

犬の耳としっぽが見えそうってくらい人懐っこく寄ってきた彼。おしゃれなお店ね、とわたしが視線を巡らせている間に、奥の個室へと通してくれる。



「ひのちゃん夏休み前以来だねー。

元気にしてたー?ちょっと顔色悪いけどー」



……やっぱり顔色良くは見えないか。

ふっと笑って「元気にしてた」と返せば、それならよかったと笑顔を向けてくれるゆゆ。極上スマイルだ。




「そなたが女連れってめずらしいじゃねーか。

あいつ、いつの間に彼女作ってやがったんだ」



「違う違うー!あやちゃんの彼女!」



「……はあ?

あいつ前の女引きずってたんじゃなかったか?」



「……あいつら店に俺ら以外の客がいねーからって」



ゆゆが個室を出て行って向こうにもどったのか、お店の人との会話が聞こえて来る。

自由に話されるそれに、うんざりした表情のそなたは「ここのマスター百夜月の先代なんだよ」と教えてくれた。なるほど、だから綺世のことも知ってるのか。



……っていうか、引きずってるって。

ゆずくんが前に蒼ノ月でも有名な話だって言ってたけど、先代の人まで知ってるってことは相当知れ渡ってるんじゃないの。



「あんま気にすんなよ、まわりの話。

お前に男がいんのはわかってんだし。ただああやって勝手に騒いでるだけだからな」