「つーか、お前指輪嵌めてんだな。
綺世が知ったら、喜ぶんじゃねーか?」
「ただ単に気に入ってつけてるだけよ」
「はは、あいつのことだからよ。
自分のこと好きになれって、明らかに怪しい惚れ薬とかその中に仕込んでたりしてな」
「一緒に買いに行ったんだけど?
というかあなたの中で綺世ってそんな悪いイメージなのね。告げ口しておくわ」
「おまっ、それはずるいだろ!」
言い出したのは自分のくせに。
わたしがずるいなんて言い出す彼にぺろっと舌を出してみせれば、はあ、とため息をつかれた。失礼だなこら。……でも、何やってんだろうほんと。
音ちゃんの存在が気になるっていうのは変わらない。
変わらないけど。……その中に、本当に彼女じゃないのかもしれないって淡い期待が見え隠れする自分に腹が立つ。だって、わたし。
「音は何なんだって……
あいつに嫉妬してるみてーだな」
ぴくり。
思ったことを言い当てられて、肩が揺れる。歩いていたそれでうまく誤魔化されたそれに、「そうかな」と素っ気なく返すけれど、心臓がばくばくいってる。
嫉妬してるみたい、じゃないの。
……彼女でもないくせに、嫉妬してるのよ。
「おー。あいつは喜ぶだろうけどよ」
「……、喜ばれても困る」
好きって言われたいしキスだってされたい。
好きな人に優しくして欲しいのは、女の子の願望。……わたしの心はそう強くなかったから、あのとき一度折れてしまった。
弱いと思われるのは嫌で。
だけどやっぱり……好きな人のそばにいたくて、好きな人にそばにいて愛して欲しくて。受け止めきれないと不安を抱くくせに、好きだと伝えてしまいたい。



