たしかこの制服だった気がするんだけど、と思いながら校門の前にたどり着くと、案の定降り注ぐ視線。

音ちゃんが数人と話しながら外へ出てきて、わたしたちの姿を見て「あ!」と駆け寄ってくるのだけれど。



「音センパイ、今日はめずらしくお迎えいるんだ」



くすりと笑った彼に見覚えがある。

そしてその両隣の男子も、もちろん見覚えがあって。



「……ひのちゃん?」



向こうから発された名前に、一瞬慌てる。

わたしはこの間、"姫が裏切っている"という話をしてしまった。百夜月の今の姫は、音ちゃんなわけで。音ちゃんが、蒼ノ月の人たちと知り合いだったのは完全な誤算。



「ひの〜。蒼ノ月の人間と知り合い〜?」



色々まずい。

顔を引きつらせながら「この間カフェで会って……」と口にすれば、綺世が「カフェ?」と反芻する。




「『LARME』で、会ったんだよ」



そう言ってくれるのは、連絡先をくれたゆずくん。

音ちゃんの前で、うっかり彼氏と一緒にいたと言われてしまえば終わりだ。とにかくはらはらしていたら、綺世がわたしと絡ませた指をゆっくりほどく。



「でも、ひのちゃんこの間は男の子と一緒だったよね」



ふわり。

天使のような笑みを口元に湛えて、そう言う美少女は今日も男の子と思えないほどにかわいい。……でも、その笑みが今は悪魔にしか見えなくて困る。



「……男の子?」



「え、えっと……」



「そ。男と一緒だしその指輪の話もしてたから、てっきりあの男が彼氏だと思ってた。

……けど、どうやら本命は綺世みたいだね」