なるほど。城藍なら、ここから近いものね。

この地区はわたしたちが通う聖蘭学園、夕李が通っている男子校、そして城藍高校と有名な学校がどれも徒歩圏内にあって、高校生が多い。



なかでも城藍学園は独自の"カースト制度"という制度を取り入れた学校で。

政府の監視下に置かれた学校らしく、セキュリティは万全。



政治家の子どもや有名企業の社長令嬢が通う学校……

つまり、お金持ち校でもあったはずなんだけど。



「……音ちゃんって、お金持ちだったり?」



「ん〜?

いや、あの学校は家柄の良いヤツが多く通ってるってだけで、別に普通の家の出身でも入れるよ〜」



……そうなのか。

わたしの地元には城藍に行った子もいないから、知り合いも通ってないし。



綺世は、どこで音ちゃんと知り合ったんだろうとぼんやり考えていたら。

もう少しで城藍高校、というところで。唐突に隣に並んだ綺世が、わたしの指を絡めるように握った。




「どうしたの、綺世」



「音と合流するなら見せつけとかねえと、だろ」



……ああ、そうだった。

初めて会った日から、今日まで全然音沙汰なしだったせいで完全にフリをすることが頭から抜けていた。危ない。なんのためにここにいるんだわたし。



歩きながら一度手をほどいてもらって、バッグのチェーンに繋いでいた指輪を嵌め、もう一度指を絡める。

なんでもないような恋人つなぎだけど、全然落ち着かなくてそわそわする。



「普通にしてたらバレねえよ」



わたしが、音ちゃんと会うからそわそわしていると思ったのか。

人の気も知らずそう言ってくる綺世に、「そうね」と返して、小さく深呼吸。城藍の学校の門が見えたところで、ふと思い出した。



この制服って……

この間カフェで会った、"蒼ノ月"の幹部3人組が、着てなかったっけ?