戦局が悪化し、建造中止になる艦も増えてきた。
国民はこの事を知らない。知らないふりをしているだけなのかもしれない。

そんな中、近江はなんとか完成した。
大和型に比べると小さいが、十分な火力を持つ主砲。装甲も厚く、対空兵装も強化された。
速力は長門型と同じくらいだ。しかし、気に入らない部分もあった。

鉄の質を下げ、本当なら大和型を超える主砲を載せる予定だったが、船体を小さくしたことで今の主砲になった。

こんなことになったのは、橿原中将のせいだった。
橿原中将は海軍兵学校を優秀な成績で卒業し、そのまま着実に昇進していった。
しかし、近江の計画辺りからおかしなことを言い出すようになる。

最後まで反発していた伯澤大将は、妥協した近江が完成しても素直に喜べなかった。

橿原中将もある程度は妥協したつもりだった。本当は副砲を減らし、零式偵察機の搭載機数を増やしたかった。
しかし、それは譲れないと猛反発をくらい、今の近江にした。