◆あなたに一粒チョコレート◆

「なに、なんなのよ」

煩い浪川の声に菜穂が顔をしかめる。

そんな菜穂に浪川がニコニコと笑った。

「実は、俺の雑誌のせいで浅田と川瀬が仲たがいしたのかと思って」

は?

「雑誌って?」

何の事か分からない私と菜穂の前で、何故か瑛太が焦った。

「浪川、それは」

「あれ、言ってないの?」

浪川がキョトンとして、菜穂がイラついた。

「なによ、分かるように説明しろ」

「ほら、あのれいの雑誌だよ。浅田に借りてた野球雑誌にうっかり挟んだままにしちゃって」

その瞬間、瑛太がそっぽを向いた。

「あっ!あのエロい雑誌……!もしかして浪川のやつだったの?!」

すると浪川が申し訳ないと言ったように頭を掻いた。

「そうなんだ……で、この間、浅田がずっと俺を睨んでたから、てっきりその雑誌のせいで川瀬がキレてるのかと」

菜穂が心底呆れたように浪川を見た。

「あんたホントにバカだねー」

その時、浪川のスマホが鳴った。