ちゃんと伝えなきゃならない。

私は静かに深呼吸をすると、瑛太の手をそっと引いた。

「瑛太、こっちに来て。私も話があるの」

瑛太はそんな私を見て少し息を飲んだけど、引き結んでいた唇をゆっくりと開いて返事をした。

「……わかった」


***

私は切り分けた小さなチョコを、瑛太の前にそっと置いた。

まだバットの中の生チョコは、きっと固まり具合が足りないだろう。

だから、ほんの一粒だけ。

でもこの一粒のチョコに、私は勇気をもらいたい。

私はこっちを見つめる瑛太に、思いきって告げた。

「瑛太、気付くのが遅くて、チョコも間に合わなくてごめん」

緊張で息が続かなくて、私は大きく息をした。

頑張れ、しっかりしろ、私。

「瑛太が好き。幼馴染みとしてじゃないの。ひとりの男の子としての瑛太が好き」

「……」

怖くて震えそうになる。

勇気が欲しくて、たった一粒のチョコを私は見つめた。

「こんなに好きだったなんて、こんなに瑛太じゃなきゃダメだったなんて今更気付いても遅いんだけど、でも、好きなの」