ここまで話した後、瑛太が大きく溜め息をついた。

「もう数時間待ってる。俺もう限界」

「え?!」

「だから、もう待てないっつってんの。今から行くから」

嘘でしょ、それは困る。

だって、チョコが……。

その時、ハッとして私は硬直した。

……ママが出かける時玄関で見送ったけど……鍵をかけてない。

瑛太が素直にインターホンを押して、私がドアを開けるのを待ってるわけがない。

絶対勝手に入ってくる!

私はスマホを放り出すと玄関へダッシュした。

瑛太が入ってくるよりも先に、鍵をかけようと思って。

なのに、

「俺の勝ち」

「っ!!」

「春」

「あの、えっと」

さっさと靴を脱ぐと、瑛太はいつものように上がり込んできた。

「……春」

それから私の真正面に立ち、瑛太は身を屈めた。

私を真っ直ぐに見る、美しい眼。

男の子らしい、精悍な頬。

瑛太……瑛太。

もう、逃げてはいられない。