私じゃないんだ。

「離して。私には話なんかない。聞きたくない」

「春!」

瑛太が、苦しげに眉を寄せて私を至近距離から見つめた。

その瑛太の背後から、悲鳴のような声が響く。

「瑛太くんっ!!」

瑛太の後方に谷口さんが息を乱しながら立っていて、彼女は私の頬に両手を伸ばしたままの瑛太に息を飲んだ。

「瑛太くんっ!!」

二度目の彼女は涙声で、その瞬間に私は分かってしまった。

分かってしまったのだ、自分の本心が。

幼馴染みだからじゃない。

幼馴染みでいたんじゃない。

この先も幼馴染みのままなんて、私は嫌なんだ。

だからだ。

だから、谷口さんの存在が辛くて苦しくて見ていられないのだ。

なんて事だろう。

今更それに気付くなんて。

瑛太に彼女が出来てから気付いたって遅いのに!!