◆あなたに一粒チョコレート◆

だからこんなに気分が悪いんだ。

私は息を飲んで自分の胸を押さえた。

なんて嫌なヤツなの、私。

瑛太に一番近いのは自分じゃなきゃ嫌だなんて。

私もしかして、いつまでも幼馴染みの地位を振りかざして瑛太を苦しめていたんじゃないだろうか。

「春。どうした?」

後ろから瑛太に手を掴まれて、身体がビクリとする。

「大丈夫。少し気分が悪いだけ」

「……」

私は手洗い場に向かうと、目一杯息をして両目を閉じた。

****

放課後。

「じゃね、春。ヨシと待ち合わせだから急ぐわ」

「ん、じゃあね」

「てゆーか、顔色悪いけど、大丈夫?」

「……多分」

菜穂が私の顔に自分の顔を近づけて真剣な眼をした。

「春。いつでも電話してきなよ」

……菜穂……?

「なに言ってんの!今日はバレンタインデーで、ヨシ君とデートでしょ?」

「でも、春は私の親友でしょ?!」

菜穂は、気にかけてくれているんだ。

最近、混乱して元気のない私を。

なんて有り難いんだろう。

「うん!」

私は菜穂を見て、出来る限り明るく微笑んだ。