◆あなたに一粒チョコレート◆

胸が苦しい。てか、痛い。

なにこれ。なんなの、この感覚。

またしてもあの時の谷口さんの言葉が胸に突き刺さる。


『幼馴染みってだけで馴れ馴れしくするのはそろそろ止めてくれない?』

幼馴染みってだけで……。

その時藤井が出入り口に視線を向けてニヤニヤと笑った。

「浅田ーっ、またチョコレートかよ。もったいないから断らずに受け取って俺にくれよー」

藤井のその言葉を聞いてクラスの皆が笑った。

「お前にプライドはないのか!」

「全部もらったら持って帰れない量だぞ!」

……持って帰れない量……。

なんか、気分悪い。

反射的に立ち上がり、席を離れようとして瑛太と視線が絡んだ。

そんな私に、何故か瑛太が驚いたように目を見張る。

嫌だ。今の私は最低だ。

今、瑛太を見て分かった。

私、嫉妬してる。

谷口さんが自分よりも瑛太に近くなるのが嫌なんだ。