◆あなたに一粒チョコレート◆

鮎川君がニコニコして続けた。

「帰りに……どこか行かない?」

鮎川君は私が怪我をしてから、なんだか凄く気を使ってくれる。

あの時自分が呼んだから私が部員と接触したと思い込んでいるみたいで、そう思わせてしまった私は申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

だから、少しでも早くいつもの鮎川君に戻ってほしい。

「うん、行こう!」

私は鮎川君を見上げて笑った。

「駅前の室内スポーツパーク行かない?私、卓球やりたいな」

鮎川君が、一瞬眉をあげてから白い歯を見せた。

「うん!行こう」

菜穂のイラついた顔にも気付かず、私はそんな鮎川君を見つめて微笑んだ。

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休み時間。

「さっすがだよなー、浅田!休み時間毎に女子に呼び出されてる」

浪川が、誰かに呼ばれて教室から出ていく瑛太を見送ったあと、羨ましそうに口を開いた。

それに藤井が猛然と食いついて頷く。

「浅田さ、好きなヤツいるらしくて義理チョコも受け取らないんだ」