ドクドクと、心臓が嫌な音を立て始める。

「……はい……」

異様に鼓動が早くなる。

谷口……架純さんは、私を見て少し笑った。

「川瀬さんの事は知ってるの。あなたは学校の女子の中でも凄く目立ってるから。それに、瑛太君の幼馴染みだそうだし。今マネージャーやってるんですってね。待っててよかったわ」

「……」

なんと答えたらいいかわからず、私はただ谷口さんの顔を見つめた。

「はっきり言うけど、私、瑛太君が好きなの。彼を見てキャーキャー言ってるだけで何もしない女の子達と一緒にしないでね。私は本気で彼を好きなの」

本気……。

谷口さんは続けた。

「単刀直入に言うけど、瑛太君に気がないなら、幼馴染みってだけで馴れ馴れしくするのはそろそろ止めてくれない?
私ね、瑛太君を自分のものにしたいって本気で思ってる。いつも時間を作って会いに来てるのよ。だからこの間は抱き締めたし、キスだって」

「先輩」

後ろから、瑛太の声がした。

振り向くと、開け放っていた扉の傍に瑛太が立っていた。

私を見た瑛太の眼が驚愕に満ちていて、これが谷口さんの口からでまかせじゃないと感じた。