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用具室は、南側と北側のグランドの丁度真ん中にある。
校舎の南側にあるテニスコートやサッカーコートからも便利がいいように。
……あれ、ドアが閉まってる。いつも放課後は開け放ってあるのに。
そう思いながら両開きの用具室のドアを開けた私は、瞬間的にビクリと凍りついた。
いつもは土と石灰の、用具室独特の匂いしかしないのに、バニラの香りがしたから。
甘い甘い、バニラの香り。
その時、私の眼の端で何かが動いた。
「こんにちは」
涼やかな声と共に、ひとりの女の子が部屋の隅から立ち上がり、私の正面に立った。
私と違い、肩までの短くて黒い髪。黒目がちの綺麗な瞳。
すごく爽やかで素敵な人だった。
それからすぐに分かった。
この人だって。
瑛太のバニラの匂いは、この人の香りだって。
彼女は私をグッと見据えた。
「瑛太君の幼馴染みの、川瀬春さん……よね。私は二年B組の谷口架純です」
用具室は、南側と北側のグランドの丁度真ん中にある。
校舎の南側にあるテニスコートやサッカーコートからも便利がいいように。
……あれ、ドアが閉まってる。いつも放課後は開け放ってあるのに。
そう思いながら両開きの用具室のドアを開けた私は、瞬間的にビクリと凍りついた。
いつもは土と石灰の、用具室独特の匂いしかしないのに、バニラの香りがしたから。
甘い甘い、バニラの香り。
その時、私の眼の端で何かが動いた。
「こんにちは」
涼やかな声と共に、ひとりの女の子が部屋の隅から立ち上がり、私の正面に立った。
私と違い、肩までの短くて黒い髪。黒目がちの綺麗な瞳。
すごく爽やかで素敵な人だった。
それからすぐに分かった。
この人だって。
瑛太のバニラの匂いは、この人の香りだって。
彼女は私をグッと見据えた。
「瑛太君の幼馴染みの、川瀬春さん……よね。私は二年B組の谷口架純です」


