私がそう言うと、三木さんはニッコリと笑った。

「うん、ありがとう!」

……手作りチョコかあ……。

そういえば菜穂も手作りチョコをヨシくんに渡すって張り切ってたよな。


私は……チョコを手作りなんて、生まれて一度もやったことがない。

お菓子作りは苦手だし興味もない。

バレンタインデーにチョコを渡すのはパパと瑛太だけだしね。

しかもデパートとかのバレンタインデーコーナーにあるやつ。

そういえば、いつも瑛太に渡すのは私が最後らしく、夜瑛太の部屋に行くと、女子からもらったチョコレートが沢山置いてあったっけ。

……今年は?

今年は……どうしたらいいんだろう。

瑛太とうまくいってない今年は……。

幼馴染みなのに、いつも一番近くにいたはずなのに、今は……なんか遠い。

無意識に辺りを見回すと、私は瑛太の姿を探した。

ランニングや柔軟体操を済ませた部員達がベンチに集まってきていて、誰よりもスラリとした瑛太はすぐに分かった。

油断をしていると顔を上げた瑛太と眼が合いそうになって、私は咄嗟に背を向けた。

……危ない。

そうだ、用具室にグラウンド整備の道具を取りに行かなきゃ。

私はその場を離れると、校舎の端にある用具室に足を向けた。