げっ、瑛太っ!

「お。浅田!後でな!」

「ああ」

ダメだ、よろけるっ!

その時、信じられない事が起きた。

出入り口の壁で頭を打ちそうになった私を、瑛太が庇ったのだ。

左腕を私の頭に回して。

「わ」

ここまでなら、壁から頭を守ってもらってありがとう的な感じですむ。

でも何を血迷ったのか、事もあろうか瑛太が私の頭をそのまま引き寄せた。

当然のことながら、私の頭は瑛太の胸にトンと当たる。

それを至近距離から見た鮎川君が、驚きのあまり僅かに唇を開いた。

いや、驚いたのは鮎川君だけじゃなかった。

なんと瑛太が、私の髪に唇を押し付けたのだ。

熱い瑛太の息が、髪を通り越して地肌に届く。

「ドジだな、春は」

囁くような瑛太の声が、低くて甘い。

嘘……でしょ、いくら幼馴染みでも、こんな事は今までにない……けど……。