すると山内君が申し訳なさそうに私を見た後、鮎川君を小突いた。

「こっちこそごめん。鮎川がさあ、今から部活だからひとめ川瀬に会いたいって」

えっ……。

「お前、そんなのバラすなよ。てかさ、野球部のマネージャーやらされてるんだって?明日……俺たちの試合見に来るの無理かな」

残念そうに私を見る鮎川君が、凄く爽やかでキラキラしている。

ああ……やっぱり王子だ……。

すると私が答えるよりも早く、山内君が悪戯っぽく鮎川君を見た。

「明日は俺達も練習試合なの!諦めろよ」

ガックリ肩を落とす鮎川君が、なんか可愛い。

だから私は落ち込ませたくなくて慌てて言った。

「大丈夫だよ。用具運んでスポーツ飲料とおしぼりとかセッティングしたら、少し抜けられると思うから」

サッカー部のコートは校舎の南側で、野球部は校舎の北側のグラウンドだ。

早足で行けば多分、五分以内で行ける。

「マジ?!俺、すげー頑張」

その時、誰かが出入り口のドアに腕を置いた。

油断していた私は背後に迫ってきていた人物の存在にまるで気づかず、思いきり振り返った挙げ句、その顔を見て驚きのあまり仰け反った。