やだ、こんなの。

「はなしてっ」

「……春」

「はなしてっ、瑛太なんか嫌い。そんな意地悪言う瑛太なんか嫌い!」

「……」

ギュッと両目を閉じた私を見て、諦めたように瑛太が私の手首を離す。

それから小さく息をつくとベッドから降りて、瑛太はなにも言わずに私の部屋から出ていった。

なによ、瑛太なんかっ!

掴まれた時、両手はまるで動かせなくて、思いきり力の差を見せつけられた。

信じられない早さで心臓が脈打ち、胸が苦しい。

瑛太のバカ!

なんであんな言い方するわけ?!

コクられて舞い上がってる?!瑛太から見たら、私はそんな風に見えてたの?!

凄く嫌だ。

今が、凄く嫌!

私は頭から布団を被ると、その中で唇を噛み締めた。

明日の朝に起こる、ショッキングな事件も知らずに。